2011年2月9日水曜日

恐怖シリーズ~1.絶対零度~

”妻”が襲われた…その一報を聞いた時私の心に戦慄が走った。
幸い、偶然通りかかった我が配下の者に助けられ”獣の慰み者”にはならずに済んだ。

だが、当然”妻”は怯え私ですら恐れて近づけない程、”心”を傷つけられた。
”妻”を病院のベッドで寝かしつけ病室を出た時、私は”人”から”獣”に既に変わっていた。

我が配下の一人、N連合の初代総長、Mが恐る恐る進言した。
『敵の所在は既に掴めております、我々の手で…』
そういう彼の言葉を片手で遮り、私は病院を後にした。

彼は恭しく傅いたまま一礼し、そして一言ぽつりと言った。
”奴ら怒らせては行けない方を本気で怒らせてしまったな…”。

それから数時間後、私は敵のアジトの前に居た。
最初から”妻”を襲った奴らの居場所は知っている、彼らの”襲撃”により廃屋となった廃工場跡地である。

彼らのメンバーの中には所謂”地元のお偉方の馬鹿息子”も居た、故に地元の警察も容易には手が出せずに居た。
季節は8月、真夏の暑い盛りで虫達の音色がより蒸し暑さを増強させているように思えた。

中では”獣”どもがトランプに興じながら馬鹿騒ぎをしていた。

私の足元から”白い煙”が突如として現われ徐々に私の足元を見えなくし更に私自身の姿を見えなくした。
”白い煙”は尚も拡大しそれはまるで”意志を持った生き物”のように廃屋全体を包み始めた。

最初に異変に気づいたのはトランプに興じていたちょんまげ頭の若造だった。
”おい、何かこうゾクッとしねぇか?”
”お前馬鹿か?今何月だと思ってんだよ、そんな事…あれ?”
呼応した奴も周りの”変化”に気づき始めていた。

周りを見れば窓には”霜”が下り、完全に外の視界を奪っていた。
入り口付近に奴らが目をやった時…其処に”丸腰”の車椅子に乗った男が一人立っていた。

突然現われた”来訪者”に驚くも相手が”車椅子に乗ったおっさん”だと解ると薄ら笑いを浮かべていた。
”おっさん、こんな所に一人で何しにきたの?こんな所に一人で来ちゃあ危ないよ~”と卑下た笑いを浮かべていた。

”この辺りにゴミが有ると聞いたんでね、ゴミ掃除に来たのさ”俺はニコリとも笑わず応えた。
”あぁ?何だテメェ!俺達をゴミ扱いだぁ?いい度胸してんじゃねぇか!死にてぇのか!”

奴らが立ち上がろうとした瞬間、奴らの目が凍りついた。
足元が完全に”凍りつき”動けない状態になっていたのだ。

”お、おい!なんだよ、これ!どうなって…”その言葉が全て言い終らぬ内屋内は一瞬にして”凍りついた”。
屋内は一瞬で一面の”銀世界”となり全てが”白銀一色”となった。

くるりと方向転換し私は屋外へ出て、地面に転がっていた鉄パイプでトン!と地面を一突き。
その瞬間建物は一瞬にして崩れ去り其処は”更地”となった。

一夜明け周囲は勿論騒然となった。

”魔の巣窟”が一夜にしてなくなった事、其処にいた筈のメンバー全員の”所在”が掴めない事。
勿論地元警察も動いたが内心は”厄介払いが出来た”と喜んだ物も数名居たらしく事件はそのまま迷宮入りに…。

”馬鹿息子”の親らも自らの”保身”の為、事を大きくはせずこの事件は”未解決事件”として処理される事となった。
町の”ゴミ”が無くなった町は”平和”と”秩序”を取り戻し何時の間にか”事件”その物が人々の記憶から消え去った。

霊能力…それは”神”より与えられし力。”正しき事”にのみ神の”許可”を得て初めてその力の行使が可能となる。

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