2013年8月13日火曜日

『LDの心理学〜或いは神経系記憶障害の心理学〜』


LDや認知症は医学的には神経系記憶障害という物に分類される。
つまり記憶が定着しないという障害を持つ病である。
此処で先ず記憶というものについて今一度考えて見たい。
多くの方はご存知ないかもしれないが実は記憶には二種類ある。
目の前にある物を認識する、瞬間記憶。
それを何度も見て脳に刻み込む、定着記憶。
人間は五感で捉えた物は兎に角何でも最初は記憶する機能が最初から備わっている。
その中で脳が取捨選択しいるものは前へだし要らない物は後ろに下げていく。
つまり”記憶”という物はパソコンのデータと同じで”消える”という事がない。
パソコンのデータもあれは上書きをしない限り消去をしてもデータは残っている。
人間の記憶もそう、新しい記憶は前へ、古い記憶は後ろに下がるだけ。
特に認知症の場合はこれが逆になる、古い記憶は前に来るが新しい記憶は後ろに下がる。
だから古い友人の顔は覚えていても毎日見る息子や嫁の顔は記憶に留められて居ない。
前述した通り、神経系記憶障害の方はこの『定着記憶』に神経伝達ブロックが掛かっている状態であり『瞬間記憶』の方には神経伝達ブロックは掛からない。
我々はこの『瞬間記憶』に神経伝達ブロックが掛からない事に着目した。
つまり、何か用件を聞いた段階で即メモる事を指導している。
されど此処までは何処の精神科医でも指導をしているレベルである。
我々のは此処からが一寸違う。
用件をメモるだけでなく、何故用件をメモったか?その理由もちゃんと書き添えさせた。
神経系記憶障害を患ってない人でも偶に用件だけをメモったメモを見て”あれ?なんで俺こんなのメモったんだっけ?”と途方に暮れ本当は大事な用件なのに間違いだろとゴミ箱行きにし後で飛んでもない失敗をしてしまった経験を持つ人は少なく無い筈である。
私も御多聞に漏れずそれで手酷い失敗を嘗てした者の一人であるw
そういう時に失敗しない為に用件だけをメモるのではなく理由もちゃんと書き添える。
すると”あぁwこれこれ、忘れる所だった”と思い出し地雷を踏まなくて済む。
例えば息子や嫁の顔を忘れている人にはポラロイド写真に患者さん直筆のメモ書きを添える。”妻の○○””息子の○○”という風に。
写真の顔を忘れても自分の書いた文字はちゃんと覚えている。
それを忘れたならば同じ文字を書かせて見たら良い、自分が書いた字だと解る筈。
それを繰り返す事で今度はそれを脳ではなく体がちゃんと覚えてくれる。
此処で面白い例を昨日聞いた話から紹介しよう。
70を過ぎて失明し現在100歳近いおばあちゃんがいる。
失明当時はまだ配偶者も存命中でこの配偶者は昔気質で右の物を左にもしない人。
故に妻が失明しても一切の家事の手伝いはせず全て妻にさせていたという。
奥方の方も目が見えていた頃の記憶があるので何処に何があるかは大体把握している。
料理に関しても”手”がさじ加減や火加減を覚えているので全く問題がなかったという。
配偶者が他界した今も一人暮らしを続けずっと洗濯から炊事迄一人でこなすという。
これを見ても人間の”覚える”という行為の素晴らしさが分かるというものである。
これを使って私はLDの当時女子高生だった同胞を立派に介護士にさせた経験が有る。
神経系記憶障害があっても恐れる事は有りません。
”脳”はちゃんと”記憶”をしているのです、その事を忘れないで下さいね。

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