過日、我が元にとんでもない勘違い男がやって来た。
『俺は間違っていない、俺は全てに於いて正しい。俺は今まで誰の手も借りずに生きて来た。これからも俺は誰の手も借りずに生きていく』と…。
一拍置いた後、私の右ストレートが奴の左頬を抉っていた。
そして『ガキが!一人前のような口聞いてんじゃねぇ!誰の手も借りずに生きて来た?はぁん、じゃあてめぇはどっから生まれてきやがった。てめぇでてめぇの種付けててめぇでてめぇの臍の緒切って、てめぇ一人で大きくなったとでもいいてぇのか。馬鹿も休み休みいいやがれ!思いあがりも大概にしろ。生まれては親、育っては周囲の方々、老いては子、それぞれの力なしじゃ人は生きられねぇんだよ。クソが!てめぇの境遇なんざに俺は何の興味もねぇし聞きたくもねぇ。どんなお涙頂戴話を聞かされたとしてもそれで?で終わりだ。てめぇが今此処へ来れたのは誰のお陰だ?道を歩いて来たなら道路を作って下さった方のお陰、公共交通機関を使って来たならその方々のお陰、その服もアクセも全部てめぇが作った物じゃねぇだろ。てめぇ昨日何食った?今朝何食って出てきやがった。そのてめぇが食った物を作ってくれたのは誰だ?てめぇか?水は?ガスは?電気は?全部てめぇ一人で供給出来るとでも思ってやがるのか。金払ってんだから提供されるのは当たり前?一人前の能書き垂れてんじゃねぇよ。てめぇの為に地球が回ってるとでも思ったがクソが!じゃあなんで此処へきやがった。てめぇ最高でてめぇが一番正しいならここへ来る必要なんざねぇじゃねぇか。とぼけるのも大概にしやがれ!』と。
相手は此方の余りの剣幕に押され怯えるばかりです、勿論この私の激怒はフェイク。
そうでもしなければ彼の”勘違い”は矯正されないと瞬時に判断したが故です。
一拍於いて(実は是も演技) 『あのな?人って言う字を良く見てみな?二つの捧が互いに支えあう形で出来てんだろ?これは見方を変えればお互いがお互いに依存しあってるともみえねぇか?見えるだろ?そうなんだよ、誰かがお前に依存しその誰かにお前も依存する、それで始めて”人”って言えるんだよ。人には固い鱗も鋭い牙もねぇ。てめぇの身を守るのはてめぇの頭だけだ。だが幾ら頭がキレても一人じゃ勝てっこねぇ。だから団体行動で強大な敵にも向かっていけるのさ。その為には皆が強力しあわなきゃならねぇんだよ。モンハン(モンスターハンター)でも強力プレイってもんがあるだろ?あれさね』と。
彼はゲーマーなのでゲームの話を例に取るとなるほど!とポンと膝を打った。
『上でも下でもねぇ、並列なんだよ。俺が偉い訳でもお前が偉い訳でもねぇ。人にはそれぞれ生まれてきた役割ってもんがある。俺にもお前にもな。その役割って奴は俺は俺、お前はお前にしか出来ない役割なんだよ。誰もお前や俺の代わりは出来はしない。だがだからこそ人と協力し合ってその”役目”って奴を果たさなきゃ成らない訳さ。』
彼は言った。
『先生…俺の役割って何だろ?俺、頭悪いし素行もよくねぇ。有る物と言えば腕っ節くらいなもんさ。そんな俺でも何かをしなくちゃいけない役割ってあんだろうか?』と。
俺は彼を或る場所へ連れて行き、事情を説明。
彼を其処で住み込みで働かせて貰う事にしました。
今の彼の仕事、それはガードマン。
私の知り合いの”社長”へ事情へ話し、彼の腕っ節の強さを見せた後正式に雇って貰いました。
今や彼は泣く子も黙る”鬼のガードマン”として重宝がられるように…。
あれだけ”イキがってたガキ”は今や”立派な大人”へと変貌を遂げたのです。
或る時”社長”の窮地を救った事が縁で彼の”ファミリー”となりその後”社長”の娘と結婚。
名実共に彼は”跡目”を継ぐ立場となりました。
今は下を可愛がる立派な”○○組”の組長として組を負かされているそうです(爆)
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